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2007.03.23

回廊

実は1番設定がしっかりしてない。











「朝なので起きてください。」

「ん~、あぁ~~ぁ・・・・・・ふぅ。」情けない声を出して頭のスイッチを一つ一つONに変えて行く、脳内をクリアにしておこう、どうせ今日は雨の日じゃないからヒキコモリ人生まっしぐらなのは目に見えている。

「オハヨウゴザイマス」

ペコリと頭を下げて隣でかわいらしく挨拶をしているのは傘さん。
「おはようございます」
私も挨拶を返す。

「オナカスイタ」

相変わらず抑揚が余り無い言葉が矢継ぎ早に打ち出される、彼女はお腹が空いているようだ、ならばこの場で私が言わなくてはならない言葉はと言えば、

「そうだね、すぐに朝食にするよ、今日はパンとごはんのどっちがいい?」

「ごはん」

「わかった、15分もあれば作れると思うから少し待っててね、その間に着替えて洗濯物を出しといてくれると助かるな。」

コクン、とうなずく傘さん、やっぱり可愛いなあこの人は・・・・・・。
傘さんは2年ほど前から一緒に暮らしている女性である、世間では同棲などと言うようだがもはやこれは結婚生活に近いような状況になってきていたりする、雨の日に何を思ったのか鋼鉄製の傘を引きずりながらずりずりと街を歩いているところに声をかけたのがきっかけ、年齢は見た目では20代以下だとは思うのだが彼女からは「多分20歳くらい」としか聞いていないので年齢はまぁそこら辺なんだろうと。

とりあえず、ずりずりと歩いてる彼女をこれまたずりずりと這うように街をさ迷っていた私は気がつくとずりずりとこんな関係になってた訳なのだが、先ほどの会話を見ても明らかだとは思うのだが、彼女は家事関係が一切出来ない、完璧に、パーフェクトに、それはもう素晴らしいほどにできない、と言うわけで私が家事全般を任されている。

雨の日以外は常に引き篭もりの私にしてみればいい暇つぶしにもなっているので、別段悪い事も無いのだが買い物だけが問題である、雨の日以外は私は外出しないので必然的に彼女が買い物に行くのだが、どうやれば豆腐とキムチを間違えられるのだろう・・・・・・、ポジティブに思考を働かせると私の料理の腕はどんどん上がるので良いのだがもう少し本人は治す努力をした方が良いと思う、1週間もキムチずくしは少しばかり胃腸にこたえる。

それにしても可愛い、天然のドジキャラな上に無口キャラ。私の趣味にアンダースローの投手が球速147キロのど真ん中ストレートを放り込んできたくらい最高である。ちなみにアンダーで147キロはオーバースローの同球速に比べると打ちにくさが10倍にも20倍にもなる。

「顔がニヤけてる」

「ぬぉおお!」

「・・・どうしたの?」

「いやいや、少し君の事を考えててね、じゃあ朝食すぐ作っちゃうよ!」


凄い勢いで取り繕いこの場を去り台所へダイナミックエントリー。
危ない危ない、こんなにトリップしてるとは思わなかった、さっさと朝食を作りにかかろう・・・・・・
それにしても「君の事を考えててね」って言った後の傘さんは随分驚いた顔してたなぁ、やっぱり可愛いなぁあの人は・・・・・・

朝食は昨日の残り物のシチューに自家製のパンにジャム、最後にサラダで終了。
所要時間10分の早業だ、専業主婦でもここまで手際よくは出来ないだろう。
さてまぁ後は傘さんを待つだけだが着替えには時間喰うし暇つぶしになるような物も無い、暇だ、365日中300日は暇だがやはり暇は慣れては来ない、雨の日以外は家出ゴロゴロしてるだけって言うのも体には良くないとは思うのだが、そんなヤワには作られていないんだよなぁこの体。

にしても傘さんは随分と遅い、部屋まで呼びに行くか――

「牛乳ちょうだい?」

いつのまに居たんですか貴女は・・・・・・、相変わらず行動パターンが一定しない人だ。
わかりました、と言って牛乳を冷蔵庫から出して傘さんについであげる、そういやそろそろ牛乳も無いから買ってきて貰おうか。

「あ、あ~あ~・・・・・・そういえば忘れていた事があったんですけど傘さん。」

「何?」

「お金がそろそろ切れそうなんで仕事貰ってきてもらえませんかね?、次の雨の日が今週末らしいので、それに合わせてくれるように言ってもらえると結構嬉しいんですけど。」

「わかった、シチューおかわり。」

返事よりもシチューが本題のような気がする、傘さんから皿を受け取りこれ以上ないってほど表面張力ギリギリまで入れて返す、見かけの割りに結構食べる傘さんである。これも萌えポイントの一つ。

突っ立っていてもしょうがないので、自分も席に座ってパンにジャムを塗り食べる、次はもう少し甘さを強めた方がいいか。
二人とも何も話さない、なんとも静かな朝食となった。

「ゴチソウサマ」
「ごちそうさま」

パン1斤近くを2人で食べてやっと朝食は終了、今日は後片付けが楽でいい、皿とスプーンと鍋を洗って終了か。
傘さんはそそくさと部屋へ行って外出の準備をしているようだ、人目もあるのであまり目立つ服装は勘弁してほしいのだが可愛いのでつい甘やかしてしまう。
ご近所さんに色々言われているのはそれなりに私のストレスになってたりするんだけど傘さんには無意味か。
準備が終わったらしく、部屋から出てきておもむろに私に紐をよこす、「髪を結べ」ということなのだろう、まるでどこかの執事の様だななどと思いついたが傘さんの執事ならそれはそれで悪くない、とまぁ彼女の髪を後ろで束ねてやり。これでよし、と呟いてみる。

「それじゃあ行ってらっしゃい、帰りに牛乳買って来てね。」

コクンとうなずき鋼鉄製の傘を持った傘さんが仕事を貰いに悪魔の所へ出かけていった、

悪魔も恐いが、私にしてみれば1番恐いのは傘さんなんだけどね。
熱いし、痛いし、回復しにくいし、思考読みにくいし、何より可愛いのが恐ろしい。

午後はそれはそれは最悪であった。
暇に暇を塗り重ねてさらにそれをミルフィーユの様な層状構造にしていくような暇な時間が過ぎていった、暇だ。

やったことと言えば掃除、洗濯、昼食を取って夕食の準備、そしてゴロゴロ、暇人の典型的な行動なのだろうか、暇すぎて悟りが開けそうになっているとやっと傘さんが帰って来た、右手には傘、そして左手には牛乳となぜかワインを持って。

「ただいま、これ悪魔からもらった。」
そんな可愛らしくワインを私にくれても一体どうしろと言うのだ。

「おかえり、牛乳ありがとうね、ワインはとりあえず玄関に置いておこうか、今日は涼しいから何も問題は無いと思うし。」

うなずいて私の言ったとおりの行動をする傘さん、それにしてもよくこんな重い物を片手で持ってきたな、牛乳とワインで5kgくらいはあるだろうから女性には辛いだろうよ悪魔さん・・・・・・、って言ってもいつも数十キロもする傘を片手で引きずっている彼女には軽いのかもしれない、それにしてもこのワインはどうしようか。
・・・・・・おっと、傘さんが何かを訴えかける目でこちらを見ている、お腹に手を当ててるからつまり

「夕食ならすぐに準備できるから待っててね。」
こういうことか。

言った瞬間に傘さんの目が光ったのは私の心のうちに秘めておいて夕食の準備に掛かろう、残っているのは煮物を温める事と味噌汁を作るだけだ。
またもや準備にかかった所要時間は10分たらず、そういえば最近は料理の鉄人やらなくなったなあ、好きだったのに。

「イタダキマス」
「はい、いただきます」

「それで仕事は貰えたのかい?」

「貰えた」

「内容はどんな感じなんだ?」

「期限は次の雨の日までで内容はいつもとおんなじお掃除。」

「また掃除ですか・・・・・・、たまには人探しとかそういう仕事は無いんでしょうかねぇ。」

「・・・・・・」

流されました。
黙々と食事を続ける傘さん、ちなみのこの「黙々」は食べるときの「もくもく」とかけてみたんだけど一人でニヤニヤしていても気持ち悪いだけである。

とりあえず今回の仕事もお掃除、といっても公園とかへ行って清掃活動に勤しむはずなどまったく無く、人間社会としてのゴミを掃除するから掃除、言ってしまえばヒットマンなどの親戚に当たるのだろうか。と言っても私の場合は自殺を手伝ってるだけの場合もあったりするので殺人をしてるわけでは無いとは思っているんだが。死にたいと叫んでいる物を壊してあげるのも強者の務めだと思って諦めてもいる。

強すぎる力を持つ物はそれだけで責任を背負っている、故にその責任に耐え切れなかった物は自らの消滅を望む、つまり死を望む。しかしながら自殺をする事が出来ない人間もいる、おかしな物でせっかく持っている力を使い切らずに死ぬのは嫌だ!と叫びながら破壊衝動のみに身を任せる馬鹿どももいたりする、自分より強い者に破壊されないと気がすまない、その強い者が私って訳だ、正直なところではこんな責任を投げ出してこのダラダラ生活を続けたいのだが、「本能」とでも言うのか「業」とでも言うのか判らないが、強い者の回りには強い者が集まってくる、死にたい者には死にたい者が集まってくる、そうしてその中で殺しあうなり何なりしている。どちらにも当てはまる私の所には強い上に死にたがりの大馬鹿野郎達が気がつけば寄ってくるのである。

面倒くさい、嗚呼面倒くさい。

「ゴチソウサマ。」
「ごちそうさま。」

鍋一杯にあった煮物をほとんど傘さん一人で食べきってくれたので今回も片付けが随分楽だ。しかし、いくら食べても太らないのは世の女性にしてみればなかなか羨ましい事なのではないか。私の倍は食べてもまだ腹八分目というのは燃費の悪さを改善する必要があるように思われる。

「そういえば」

いそいそと夕食の後片付けをしてると珍しく傘さんから私に話しかけてきた、彼女が口を開けば大抵が食事と挨拶しか出てこない為。私に話しかけてくる事は本当に稀だった、大抵は私から話しかけて流されるか抑揚の無い声で返事を返されるかしかない。

「お掃除の時の思い出とかあるの?」

「む・・・・・・」

そう言われると返答に少し困る、確かに傘さんに会う以前からも仕事と言えば掃除しかした事が無いが特に思い出と言っても出てこない。

「んー、思い出ねぇ。」

「うん、思い出。」

何かあっただろうか、最初の仕事も特にコレといって感動も無かったし、印象に残ってる相手も特に代わり映えの無い見た目どおりの怪物とかそんなもんだしな、・・・・・・そういえばおかしな奴がいたな、あいつの話でいいか。

「思い出、と言うか印象に残ってる奴の話でいいかな?」

「それでいい。」

とりあえず、傘さんと会う前の悪魔から依頼から仕事で行ったら目標は先に殺されてて、居るのはいたって普通のサラリーマンが一人、ぽつんと突っ立ってたんだよ、それでまぁこっちに気がついたらいきなり

【こんな雨の日にお一人でどうしたんです?】とか聞いてきまして、

【お前の足元に居る奴に用があったんだけどね】なんて感じで返したら

【それじゃあ貴方も消しておいた方がいいですね】なんて返されてそいつがポケットからイヤホン出して付けたらいきなり豹変して襲ってきたわけだ。

それでまぁ戦ったんだけどそいつが強くてね、こっちの攻撃は全然当たらないけど相手のは的確にこっちの急所に全部入れてくる、しかも途中で攻撃のテンポが変わるものだからやりにくいったらありゃしない。
で、かなり長い時間戦ってたと思ったら急に止まって、

「曲が終わってしまったんで私はコレで帰りますね。」

って言って帰ってった。

「こんな感じの思い出っていうか印象に残ってる奴はそいつくらいかな。」

「・・・・・・そう。」
お気に召さなかった様でしたが私にはどうしようもないです。

「じゃあ俺はそろそろ寝るよ、傘さんも早めにね。」

「オヤスミ」

「うん、おやすみ。」

何やら最初から最後まで傘さんは嬉しそうなというか笑いを堪えているような表情をしていたな。何かしたか俺。
それにしても眠い、特に体を動かしていなくても眠いときは眠いのだ。
だから眠気にそろそろ耐えられそうにない。寝る事にしよう。
ぐぅ。




特に語ることの無い暇な2.5日、時間にすると60時間、分に直すと3600分、秒に直すと216000秒、こんな事を言ってる間にも23秒が過ぎてしまいまして、

「オハヨウ」
今日もまた抑揚のそんなに無い傘さんの声で起こされました。

「おはよう、今日は雨みたいだね。」

「夜から降る」

「うん、そうみたいだね。」

「オデカケ?」

「この前の悪魔さんからの仕事片付けないといけないからお出かけは次かな。」

「残念・・・・・・」

傘さん、貴女は本当に天然だ、この数秒のやり取りだけで俺を殺しそうになってる、本当にこの人は・・・・・・
でまぁ、本を読んだり、音楽聴いたり、傘さんとイチャイチャしようとして傘で危うく撲殺されそうになったしていると。

「そろそろ出かけるよ傘さん。」

「雨降ってきたの?」

「後数分で降り出すから準備しててね。」

無言で頷いて部屋へと走っていく傘さん。
さて、とりあえずこの顔を何とかしないとまた傘さんに変な顔されてしまう。
こんなにニヤけてたらさすがに可笑しいからな。

・・・・・・駄目だ、気を抜くと今にも笑い出しそうになる。
雨の日はどうしても理性の束縛が弱くなるな、さすがに2年もたてば最初の頃のようにイっちゃったりはしないが気を抜くと危ない。
とりあえず私も準備しなくては、と言ってもコートを1枚だけ羽織り私の準備は完了、先に玄関へ出て傘さんを待つ事にした。
扉を開けると雨の濃厚な匂いがしてくる、その香りを胸いっぱいまで吸い込んで止める、そしてゆっくりと吐き出す、今日は少し寒いな。
段々と私が鬼へと変わっていくのが判る。だがまだ完全に変わってはいけない、だって傘さんとの散歩を少しは私も楽しみたい。
しかし、幾度の雨の日を過ごしてもやはりこの感情は抑えられない、私は自覚していないフリをしているがやはり顔に出てきてしまうようだ、もはやこの感情は反射でもあり本能でもあるのかもしれない――

おっと、傘さんの準備が終わったようだ、玄関でガタガタと音がしている。
扉がゆっくりと開き、傘さんが出てくる。

「それじゃあ行こうか。」

「うん。」

傘さんが私のコートの端をギュッと握って頷いた、なんだかやけに嬉しそうである。
鋼鉄製の傘を私が差して相合傘の形で「お掃除」へ向かう。

ゆっくりと無言のまま歩いている二人、一応恋人という関係上はここは色々と話をしたほうが良いのだろうが今の私にはそこまでの余裕が無い。目的地へ近づけば近づくほどに顔が歪んでいくのが解る。

「傘さん」

「何?」
と私の顔下約20センチ辺りから上目使いで私を見上げて返事を返す傘さん。

「そろそろ今回の目的地だから先に行ってるよ。」

「わかった・・・・・・、終わっても待っててね?」

「もちろんだよ、それじゃあ先にね。」
と額へ軽くキスをしてから、この暗く深い雨の下を走り出す。


顔に雨粒が当たり弾ける、幾重も幾重もの雨の層を突き抜けてゆく、体のフォルムに沿い雨がかき消されてゆく、聞こえるのは雨が地面を、私を叩く音。
実にいい気分だ、雨の日は実にいい気分になる。誰も、何も、もちろん自分さえも束縛と名の付く概念じたいが無い状態。
考える事を一つに集中するだけでいい、正確には考える事すらしなくなる。
無知であればあるほど世界は歓喜に満ちている。考えるな、考えるからこそ世界は辛く当たる。この瞬間だけは私は世界すらも見方につけているのではないのだろうか。
考えるのは人生のうちの90%でいい、残り10%は何も考えないでいい。毎日悩んでいるのだから雨の日だけは私は悩まない、悩む必要がない。
理由なんて簡単だ、私は人ではない。これだけで十分だ。

「ククッ・・・ククククク・・・・・・」

不意に口から笑みがこぼれてしまった、もう我慢が出来なくなってきている。
前回の雨から2週間、前回の掃除から1ヶ月と12日、溜まっている物はいくらでもある。
今日は本当に良い日だ、素晴らしい日だ、この腐ったような夜空も、イカレている俺の頭も、今日はなんて素晴らしく思えるのだろう、
闇夜を一人疾走する、もうこの歓喜を抑えきれない、純粋な破壊衝動と喜びだけが体中を支配していくのが感じられる。

「■■■■■■!」

もはや口から出てくるのは叫び声とも笑い声とも違う絶叫――。
何もためらう事は無い、俺は単純にこの感情に従えばいい、それだけが全て、目標はたった一つ、そうたった一つだけだ。
ただひたすらに走り続ける。

「さて、ここかな。」

目標が居ると言われた場所へ到着する、怪物が棲むにはもってこいとはあまり言えない場所だ、ホームレスなどが居る場所としては最高だとは思うがあくまで基準が人間だからだろう。もう寿命を終えて朽ちていくだけに思える住宅街、やはり怪物向きではない。怪物が居るのに相応しいのはもっと完璧に人が居ない所か人しか居ないような場所の2択だろ。
悪魔から傘さんが聞いた事は単純である「次の雨の日にこの人を始末してください。」との事だ
手渡された封筒には写真が1枚、写っていたのは能力者らしいと言えばらしい、怪物などと呼ばれる類のソレである。
明らかに人間離れした体と獣のような体毛と牙、悪魔達が定めた分類では亜人間1級種とか呼ばれてる人間辞めましたって奴等だ。
いや、今はそんな事はどうでもいい、今の目標はたった一つしかない。
その怪物を殺してしまえばいい、それだけで良い。

・・・・・・語弊があった、目標は確かに一つだが、殺すのではなかった。一方的な惨殺とも違う、俺は救ってるだけだ。

とりあえずお相手を見つけなければ話にならない、勝負事とはすなわち相手が居るから成立するものだ。
匂いで追跡できるような鼻も俺には無いし、ってまぁ雨の日だし匂いはほとんど期待できないか。音も雨の轟音の前ではほぼ無意味だ、叫べばそれなりに聞こえるだろうが望みは薄い、ならば残るは視覚くらいしか残ってないわな、相手が第6感を持ってたりするなら別だがまあそんな能力者はそうお目にかかったことが無い。
さて、どうやってお相手を見つけましょうかねぇ、図体は俺の軽く倍は有る様だからそう難しくは無いと思うが、とりあえずそこら辺の建物破壊しても悪くは無いか、相手の理性が本能をまだ抑えられていればそれで出てこないはずだ、それなりにやりにくい相手になるが俺としては願ったり叶ったりだ、逆の場合はただ力の強い獣と戦ってるだけになるからその方が楽でいいと言えば楽でいいが、あまり楽しめそうにはない。

悪魔の野郎も「ここら辺」とだけしか資料に書いてないとは、思考をとりあえず索敵にだけまわしてみるがあまりいい案は出てこない、ぶらぶら散歩でもしてれば出てくる可能性もあるがそれでは時間が掛かって傘さんに追いつかれてしまう、それは出来るだけ避けたい所だが・・・・・・。

雨の中立ちつくしている怪しい男をしばらくやっていると、「のそり」と言う擬音がとても似合う怪しい影が路地を横切って行った、そんな様子を見逃せる俺でも無い。
まあ、そりゃ獲物がこんな所で一人立ち尽くしていれば狩らない狩人はそう居ないか。
今の感じだとこっちの様子を見ているだけか、もう少しして俺を狩れると確信したら襲ってくるだろう。


「クククッ・・・・・・」

やはり楽しい、命を狙われるのも命を狙うのも両方が俺にとっては何よりも素晴らしい娯楽になってきているな。

「どこまで人間を辞めているんだか・・・・・・クックッ。」

そんな自傷めいたひとり言を吐き終えた。

・・・・・・と同時に俺の頭部に頭を吹っ飛ばされるんじゃないかと思うような衝撃が襲う。実際の所、俺は頭こそふっ飛ばされなかったが、体ごと6mほど吹っ飛ばされた、そして見事に鉄筋コンクリート製のビルへ体当たりをかましていた。

状況把握終了、と同時に索敵も完了、さて残るはお楽しみの時間のみと。

「さて。」
まるで転んだだけのようにのそっと立ち上がりホコリを手で払う、それを見ている怪物さんは私の対応に不満らしい。
とりあえず目の前の怪物は俺の体長の軽く倍、体重はさらに何倍もあるだろう、写真から受ける印象と何ら変わりの無い怪物っぷり。
しいて言うならば猪とゴリラと人とサイを足して、猪:ゴリラ:人:サイ=37:19:8:36 くらいの割合で振り分けて丁度100ですよって感じの風体。
俺に対してなんの言葉も発しない辺りを見ると本能が理性を超えてしまっているタイプ、もしくは人見知りするタイプか。

「いきなり殴ってくるなんてひどいねぇ、普通の人なら即死確実だよ?どんなに良くても植物人間が限度のレベルかな。」
話を振ってみたつもりなんだが彼?(彼女だったら恐ろしい)はまったく反応を示さない、てことはただ力の強い獣に確定か、まあ少しは頭が働くと嬉しい。

「まぁ、殺しあいますか。」

俺は悠然と怪物と呼んだ物に向けて歩を進めてゆく。

「さて、お楽しみの時間ですよ怪物さ」

「待て。」
全部に濁点が入りそうな声で「怪物さん」と言おうとした俺の言葉を「怪物さ」まで言った辺りで怪物さんが制止を求めてまいりましたが。

・・・・・・はい?、あれ?もしかして俺の把握ミス?こいつは人見知りするタイプだったわけ?

「お前が鬼か?」

「確かに私は鬼の人だけど何か問題でもあるのかい?」
鬼の人って言っても鬼なのか人なのかどっちつかずな上にどこぞやの肉製品加工会社のCMに出てくるハムの人みたいであまりいい気分でもない。

「悪魔から話は聞いている、掃除をお願いしたらしいので早めに取り掛かってもらいたいのだが。」

「今この瞬間にお前を掃除しようとしてそれを制止させておいてその言葉は無いんじゃないかな。」

「俺を掃除?何のことを言っているんだお前は、悪魔には部屋の掃除を頼んだとお嬢様からは聞いたんだが。それと悪魔からは女性と二人で来るとも聞いているんだが。」

「部屋を掃除?」
・・・・・・・・・・・・まさか、俺はいつもの掃除をしようとしに来たわけだが、今回の仕事は文字通りお掃除だったって事か?だが傘さんはいつもの掃除と言っていたが、ってあの人の言う事のそこらへんは曖昧だからな。話を半分も聞いてきていない可能性も大いに考えられる、でなんだ、俺は雨の日以外に死ぬほどやってる掃除を他人の家でもしろと言われているのか、まあ確かに掃除だ。

「というかお前、一応立ち入り禁止の看板が立てかけてあったはずなんだが気がつかなかったのか?」

「・・・・・・全然記憶にない、というかお前は何なんだよ、とりあえずお嬢様だかって奴がいてそいつが上司(?)なのはわかったけどさ。」

「見た目どおりただの庭師みたいなもんだよ、ここいらに入ってくる一般人をやさしく追い出してるだけだ。」

「やさしく、でさっきの首が吹っ飛ぶような感じなのかい、お前みたいな怪物がよくもまぁ堂々と・・・・・・」

「お前の出していた殺気が明らかに尋常ではなかったので最初からそれなりに思い切り殴っただけだ、いつもは俺の姿を見るだけで逃げていく。そして何か勘違いしてないか?俺は別に人を殺して食ってるわけでもない、俺はベジタリアンだ、肉、魚は一切食わない。」

「はぁ・・・・・・、もう色々と面倒になってきた。とりあえずさっきお前が言ってた女性の方を迎えに行っていいか?」

「別に構わない、だが入ってくるときまでにその血をなんとか出来ないのか?」

「血?、何のことだ?」

「お前の体全体と主に腕に集中的についてる血、血液の事だよ、そんなことも解らないのかお前は。」

言われて見てみれば何故か体一面血だと思われる液体で真っ赤に染まっている、何時の間にこんな事になってるんだ、まったくこちらも記憶に無い。

「とりあえず、迎えに行ってもう一度ここに来る頃には雨で落ちてるだろさ。」
色々とやってしまった感が否めない、まさか。まさかこんなオチだとは・・・・・・
ここまでテンションを上げている俺の立場がまったく無くなってしまったではないか、少し落ち着こう。とりあえず今は傘さんを迎えに行こう、後の事はそれから考えよう。

傘さんを迎えに行く途中、肉の塊がゴロゴロと車道に転がっているなんとも奇妙な光景を見る、肉屋のトラックがきちんと扉でも閉め忘れたのか?

「お、傘さーん。」
ずりずりと傘を引きずりながら歩いてくる傘さんを発見して声をかける。

「早かったね。」

「それがそうでもないんだよ、何かまぁ色々勘違いで部屋の掃除をする事になってました。」

「そう。」

「とりあえず依頼主も待ってるようだし急ごうか。」
よっと。傘さんを右手で抱きかかえ、左手には傘をさして依頼主の待つ廃ビルへ向かう。
傘さんが私でも片手で数えられるほどしか見ていない笑顔で私を見ている、傘さん、アンタはやはり悪魔よりも恐ろしいよ。


「ただいま~っと、お。ベジタリアンさんがいない。」

「ベジタリアン?」

「ああ、さっきここで知り合ったんだ、人は見かけによらないもんだと改めて思い知らされるような人だよ。」

ふーん、と余り興味の無いご様子、根掘り葉掘り聞かれてもこっちが返答に困りそうなのでさっさと廃ビルの中へと入ってゆく事にしよう。
傘さんを下ろして、ほとんど扉の意味を成していないガラスの扉――ほとんど残ってるのは四隅しかない――を開けて中へ入る、15m×15m四方の箱型、向かって右手には階段があるくらいで特に変わった事も無い、外の見た目の割には中は小奇麗に片付いていた、物が無いからそう見えるとも言えるが。
依頼主のところへ行こうと思い歩を進めようとするが。
「傘さん、悪魔さんに何階にいるかとか聞いてない?」
「何も。」
むぅ、困った。あまり性能の良くは無い頭をフルに活用して正解を導き出そうと試みる、が5秒も経たずに諦めた。
「まあ、こういう場合は大抵は地下だよな。」
完璧に勘任せにした、案外こういうときはこの方がいい方向に動く傾向にある・・・・・・4:6位の割合で。

階段を下へ下りてゆく、階段が何かで濡れていて途中で何度か傘さんが転びそうになった。色と匂いを見る限りでは血液では無いことは確かだが、生臭い。
B1と書かれた扉の前までたどり着く、地下は1階しかないので勘が当たっていればココに掃除を頼んだ方がいるのだろう。
生臭い匂いは気になったが、依頼は部屋の掃除だったらしいのでそんなに危険も無いだろう、そう自分に言い聞かせて扉を開く。

部屋、と言うよりは1フロアと言った方が大きさ的に近いと思う、部屋と呼ぶには少し大きすぎる気がする。部屋は一面白をベースに赤と黒と所々で黄色の配色が見られるが白以外は汚れと判断していいものと思われる。床には一面赤と黒の液体だったのだろうと思われる粉末や、まだ乾いていないドロドロとした液体がそこらじゅうに点在している。階段では感じられなかった血液や肉の匂いやナマモノが発酵したがここではまるで空気並みの密度を誇って存在している。感覚系が発達している能力者なら嗅覚を破壊されかねない匂い。部屋にある物といえば後はポツンと放置されているクローゼット、その近くに同じように放置されている冷蔵庫、そして最後に木製の頑丈そうな机の上に置いてある肉だと思われる物であふれそうになっている水槽。ポコポコと酸素を水槽内へ入れている機械音がする。

コレだけのことを把握するだけでそれなりに時間を費やされた、こんな怪物の胃の中みたいな場所を見ることなんて人生の中でそう多い事でもない、把握に時間が掛かるのも察してくれ。何よりも俺のテンションが下がってしまっている。
一応私も鬼。この程度の事では何の驚きも無い、思ったことと言えばこの部屋の掃除に掛かる時間と労力の事だろう。

ここまでは何も問題は無かったのだが、さすがに私の想像を超える展開が起こってしまっては言葉に詰まる。

ぶらぶらぶら。水槽の中から肉が競りあがってその身を震わせている。よく見るとそれはだんだんと人の手の形を成してきている。

次に「イラッジャイ。」と水槽の中から音がする。もしかしたらあの震えている肉はこちらに手を振っているつもりなのだろうか。

水槽の肉が盛り上がってゆく、縦長にモコモコと、いやドロドロか。むしろここはもっと気味の悪い擬音を当てはめるべきだろうか。ならばデュロデュロとかはどうだろう、これでは少し水っぽいか。

肉はだんだんと人と思われる形になってゆく、そしていつの間にか年齢にして役10~12歳位だと思われる幼女が立っていた、無論生まれたままのナチュラルな姿のまま。
そのまま隣にあるクローゼットから純白の白衣を取り出して羽織る。下着くらい穿きましょうよ、目のやり場に困る。
その幼女はこちらに向き直る。

「・・・・・・・・・・・・。」
言葉に詰まる私。

「・・・・・・・・・・・・。」
相変わらず表情の変わらない傘さん。

「・・・・・・・・・・・・。」
私達の反応に戸惑った顔をしている肉幼女。

「・・・・・・・・・・・・あれ、驚かしちゃった?」
やっと言葉を発したのは肉幼女ちゃん、驚かない人が居たら私は少しだけ尊敬するよ。

「一応悪魔の方には言っておいたんだけどなぁ・・・・・・。ってとりあえず今回掃除を頼んだのは私ね?いつも掃除とかやってる奴がちょっと私用で出てっててさ、私一人じゃこの部屋を掃除できるとは思えないし、やろうとも思わないので頼みました!よろしくお願いします!」
何なんだこの空気は、温度差によって気流が生まれそうだ。

「・・・・・・まあ、今回掃除に来ました鬼です。こっちは傘さん。」

「よろしく。」
結構興味津々だな傘さん、目が光ってますよ、爛々と。

「よろしくね!」
元気ですねこの幼女は。



さて、いそいそと掃除を始めたわけですが。

「ねえ、【どろ】よりも【だら】の方がどろっと感が出てると思わない?、あ~でもそれだとなんか粒粒の固形物も混ざっている感じになっちゃうか。と言うか【だら】ってなんか魚っぽくない?鱈の親戚とか言ったら当たり前過ぎるから、そうだなぁ、あえて蟹とかの仲間でいこう!狂気!蟹怪人ダラ!とかっていそうじゃない。」

「・・・・・・。」

幼女様は幼女さまでまったく持って手伝う気は無いと、当たり前といえば当たり前か、やりたくないから俺らを呼んだわけだし。傘さんも傘さんでひたすら肉幼女の話を聞いてうなずくだけの機械と成り下がってしまっている。相変わらず目が輝いているのは一体どういう事なのだろう。ここで世俗的な妄想を働かせてみるとそうだなぁ。こんな妹が私にも居たら可愛がってあげるのに(性的な意味で)とか考えているのだろうか。ありえない話だがありえる話を考える事は妄想ではなくただの想像なのでこれくらいの方が良い。もし傘さんがそんな事考えていた場合には私の立場が消えてなくなる気もしないではないのだがそこはあれだ、男子の夢が一つ叶う可能性も一緒に出てくるのでそれはそれで良いのかもしれない。
ここで言う男子の夢って言うのは別に説明する必要は無いだろう、男子の夢なんて9割近くがキャッキャウフフ的な妄想だと相場は決まってる。

・・・・・・男が言うキャッキャウフフって気持ち悪い事この上ないな、次からはもう少しばかり頭を使った比喩を考えておこう。

「あ、鬼~ぃ。そこのクローゼットに傷つけたら報酬は半分ね~。」

「・・・・・・鬼畜。」

「鬼の貴方に言われるとなんだか洒落っぽくて評価高いね!よしよし。傘さんは私で引き取ってあげるから貴方はさっさと掃除して引き上げてしまいなさいね!」

「どうやれば傘さんを引き取る話に繋がるんだよ!言われなくても掃除ならしてんだろ!まさに!今!now!」

「まだ部屋の半分も掃除終わっていない鈍亀君には私の執事を見習わせたいですよ、彼は本当にいい執事だ、キミの13倍速くらいのスピードで掃除を終わらせてたぞ!というか鬼に鈍亀は何かおかしいので今から君は鈍鬼くんだ!読み方はどんきくんで!昼ドラに出てきそうだとか突っ込んだら負けですよ!」 

「鈍鬼は勘弁してください、いろいろな意味で申し訳なくなってくる上にそんな名前では私は生きて行けそうに御座いません。それと執事がいるのならさっさとそいつにやってもらってください、13倍速の雑巾絞りを是非見てみたい。」

「キレが悪い、ノリも悪い、よって6点!ちなみに65点満点です!なんで65点かは天も地も知らないし私も知りません!そしていいからさっさと仕事しなさい!」

とまぁ良い様に使われてるわけです、傘さんと肉幼女は水槽の乗っかっていた台の上で談笑中、私は一人で掃除中、やってられるか。
だけどやらなくては生活に困る私は悲しいかな社会不適合者、ワンフロアに隙間無く塗りたくられた血(っぽいもの)やら内臓の破片(らしきもの)をひたすら片付けてゆく、いかに掃除に慣れてるとはいえ、この量は清掃会社単位で掃除する物のような気がする、1ダスキン、2ダスキン、3ダスキンあれば1時間で終わるか。嗚呼ダスキン様、私に救いの手を。ガクッ

とか考えながらひたすら手を動かし、足も動かし、体の機能を掃除一点へ向けること6時間弱。もはや外の時間は4時か5時。やっと掃除が終了いたしました。

「ついーっ、鬼子さん!まだ赤血球が12個も残っているじゃない!」

「ひぃい!お姑様、申し訳ありません!」
もう一々突っ込むのが面倒になってくる、ならばここは相手に乗る事が大事だろう。

「じゃあ誠意を見せてもう一度やり直しね(はぁと)」

「スミマセン、カンベンシテクダサイ。」

「まあ、それなりに綺麗になったし今日のところはコレで勘弁してあげるわ、傘の顔に免じてね。」

「アリガタイシアワセ・・・・・・」
何時の間に傘なんて呼び捨てするような仲になったのだろう。
というか傘さん、貴女最初の「よろしく。」以外は何一つ言葉を発していないですよね?いまだに目が輝いているし。6時間も見つめっぱなしでよく疲れない上に飽きないな。
・・・・・・今まで我慢してきたがここは一応聞いておきたい。

「肉幼女様、お聞きしたい事があるのですが。」

「肉はいらん、肉は。レディーに対してずいぶんと卑猥な定冠詞をつけるのね、もう少し優雅さとか気品とかを学んだ方がよろしくって?、でまぁいったいなんでしょう。」

「この部屋一面にこびりついてた肉(っぽいもの)とか血(と思われる液体)はどうやってついたんですかね。」
ヤバイか、これはもしや地雷だったか、だがそういうプライベートな事を話したくないのであればプロの業者を呼んでもらえばいいだろうよ、こっちは本職でもなんでもないんだからそれくらいのことは聞いていいよな!

・・・・・・いいよな?

「レディーのプライベートを覗こうなんてはしたない!でもまぁ一応話してあげましょうか、って言ってもそんなに驚く程の事じゃないよ?」

「廃ビル、幼女、血、とこの3つの組み合わせだけで世のロリータコンプレックスの方々には十分驚くことですよ(性的な意味で)」

「何か嫌な響きだな、まあ普通に食事して遊んで寝たらこうなっただけよ?」

「無理がありますよ色々、でも想像できないほどでもないのが恐ろしいんですけど。」

「じゃあその想像であってるよ!多分!きっと!説明するの面倒だし!で。答えてあげたお礼に傘は私が引き取らせてもらいます!」

「断じて断る!傘さんは俺の嫁だ!渡してなるものか!」

「嘘よ嘘、くれるなら是非いただきたいのですけどね、というか今時三次元で嫁宣言を行うとは、オヌシナ、カナカノ猛者ダナ。」

「イイエ、代官様程デハ・・・・・・、ってカナカノ猛者ってなんだよ!」

「金科の猛者、お前は金属だ!」

「金科ってまずなんなんだよ!、それに俺は人間を辞めそうにはなってるが残念ながら金属ではねぇ!金属のオッサンは知ってるけどな!」

「今度紹介しなさい、是非溶かしてみたい!」

「一応傘さんの傘作ってくれた人がからそれは断る!」

「えー、いいじゃん、けちー、鬼畜ー。」

「鬼ですから。」

「うわぁ、格好つけて言われた!キモイ!」

「それはひどいぞ、俺だってキモイと言われれば悲しむよ!?」

「さて!これ以上いると傘が寝不足になってお肌が荒れると困るので、まあ楽しかったよ!オヤスミ!帰れ!」

「俺のフォローは無し!?、かなりひどい追い出しようだな・・・・・・。ってその前に代金を下さいよ。タダ働きなんて真っ平ごめんですので。」

「ん、ああ。そういえば忘れてたね、そのまま忘れてればいいものを。」

「残念ながら忘れません。」
クローゼットにトタトタと幼女らしさをアピールする事を忘れずに歩いてゆく。中を少し漁ったかと思えばまたこちらに行きと同じように歩いてきまして。
受け取れぇえええええええ!、と言わんばかりの迫力で封筒を渡されました、そりゃあもうこれ以上は無理です、入らないです先輩っ・・・・・・ってほどにパンパンの封筒を。

「これで足りるよね?」

「是非また呼んでください幼女様、それではお休みなさいませ。」

「うむうむ、くるしゅうない、ちなみにその中身の半分は円じゃないから。」

「どんな単位の金が入ってるんだよ!」

「インドリラ。」

「一体どれくらいの相場の金なんだよそれは!ってかいままで1度も聞いた事ねえぞ!」

「嘘よ嘘、冗談が通じない相手ねぇ。」

「はぁ・・・・・・、とりあえずそろそろ帰りますね。」

「うん。たまに遊びに来てくれると嬉しいな。まあ今にこっちから遊びに行くかもしれないけどね。」
ペコリと可愛らしいお辞儀をしてきたのでこちらも返す。
それから二人でゆっくりと階段を上がって玄関へ出る。



最後の23文字ほど聞かなかった事にして。


外はもう朝方のようで、雨雲の隙間から青空が見えている場所もある。
ヤバイ、結構な勢いでヤバイ。
そろそろ雨が上がってしまう。

「傘さん、悪いけど少し急ぐよ?」

「どうしたの。」

「雨が上がっちゃいそうだから早く帰って家の中に入らないと。」

「わかった。」

傘さんが私に両手を向けてくる、わかってる、さすがにわかってるな傘さんは。
お姫様抱っこ。そうだよ傘さん。いつもこういう場合はお姫様だっこですよ。
喜びを隠そうともしないで笑顔で傘さんをお姫様抱っこする。

「さあ、急ぎますよお嬢様。」

急げ急げ急げ。早くしないと雨が上がってしまう。
後家まで1キロ弱、時間的にはギリギリだ。
傘さんは私の腕の中でじーっと前だけを見つめている。
マイペースと言う言葉が背後に常に付きまとってるような人だな。
あ、あ~、ああああああああ。待ってくれ。まってくれ雨!
後200m弱、目の前に家はあるというのに雨が上がってしまった。
スミマセン傘さん、もう無理っぽいです。
立ち止まり傘さんを下ろす、と同時に倒れこんでしまった。

「ダイジョウブ?」

「・・・・・・。」
言葉に出来るほどの力が無い。

「・・・・・・。」
ずりずりずりずり、引きずられております。
傘さん、一応私って恋人じゃなかったんですかー、どうなんですか傘さんー、てか背中が非常に痛いんですがー。
言葉を出そうにもそれを出すだけの力が無い。
傘さんもよく俺を引きずっていけるな、色々申し訳なくて責任を感じてしまう。
ずりずり、ずりずり、ずりずりり。
ドアを蹴り開けた傘さん、もう少し丁寧に開けま賞だな。
とりあえず、なんとか玄関まで到着した訳で家に入れれば一応なんとかなる。

「動ける?」

「なんとか・・・・・・。」
立ち上がろうとするがヒザに力が入らない、にしても久々にあんなに長く晴れた空の下にいたもんだ、回復にどれだけの時間がかかるのやら。

「傘さん、とりあえず俺はベットで休ませて貰うけどいいかい?」
うん、と頷いて居間へ小走りで向かう傘さん、をうつぶせのままで見ている私、傘さんの可愛らしい下着が見えたのは今日の私に対する神の粋な計らいか?
と思ったが、残念ながら傘さんはドロワーズを御着なさっておられた。さすが傘さん、マニアックな私のツボをなんとも上手くついている。
それにしてもドロワーズの妙な魅力は一体どういうところから来ているのだろう。というか傘さん、貴女の年齢でそれが似合っているのは色々と問題があるような気がするのだがどうなのだろう。
そういうことはベットでもゆっくり考えられるか、とりあえず今は心の奥にしまってからベッドに向かおう。
ずりずりずりずりずりずりずりずりずり。
なんとか到着、一応上着は脱いでおこう、そのままベッドへなだれ込む。
やっと寝れる。
回復にかかる時間は今までのを考えると2日くらいか。

さて、先ほどの傘さんのドロワーズの件について、いやらしい妄想を増幅させようか。







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