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2014.08.06

5年ぶりに見つけたので

空の遥か高みより投擲されたソレは、破綻した己の本能により加速を続ける。
生物として最低限の危機感すら捨て、ただ一つの現象 一つの弾丸 一つの破壊として存在するためだけに自らを破壊した者は、自己の持つ能力を最大限発揮して破壊力を増す。

形態を変化させ
加速を続け
そして目標へと飛来する

思考する弾頭が至った結論は、全てが破綻しているこの街ですら異常であった。


人としての器を全て変質させてしまった男がいた。
彼は自由に空を飛びたいと願ったわけでもなく、唐突に体が組み変わった。
まるで元よりそうであったかのような完璧に、全てが組み変わった。
国側が勝手に定めた定義によると、自分はもはや人というカテゴリーにすら入ることを許されていないのだ。
生物として理外に置かれた者達があつまるここですら、私の同類は六種しか居なかった。
だが成ってしまったものは仕方がない。

最も異常な者が最も平凡な生活を送るというのは、一体皮肉意外の何だと言うのだろうか。









第一章 夏


「なーあー、店長さんよー、俺もですねー、こうですねー、もっとエネルギー溢れるなんつーかー、その。若者らしい事がしたいんですよ!でもこの街で若者らしい事って何かあるのかって結局素敵なキャンパスライフに性を出すくらいしか無いんですよ!!」

「郎くんなら女の子でもひっかけにいけばいいでしょうに、モテないわけじゃないんでしょ?」

バーのカウンターを改装した我がハウス 我が店 名前はまだ無い アダ名は廃屋バー ひどくないかねちょっとそれ。
そんな店でこのクソ暑い中、コーヒーよりも乳製品の方が比率が高いためコーヒーと表示できない飲料を飲みながら――それもホットで――郎君と呼ばれている若者は駄弁っていたのだ、これ以上無く完璧に駄弁っていたのだ。

「あ!店長今のはひどいよ!俺に彼女とかそういうワードはNGです!Death!死!この前だって可愛いなーって子居たんで声かけたら悪魔さんとこの従業員だったんだぜ? さすがに無理だって、清少納言にアタックする平民くらい無理。」

私といえば、この店――常連客と変な常連客と変な人と変な一見さんしかいない――の隅から隅までヒマに任せて掃除をし、グラスを磨いている。 唯一の客は自分でコーヒーを取り出して飲んでいる始末だ。

「他に若者らしい事って何かあるでしょうに、ちょい悪?みたいな事も今しか出来ないわけだし。」

我ながらオヤジ臭いが、もういい加減まともに取り合うのも面倒になってきたのだ。
あと郎君、清少納言に平民がアタックって難易度のたとえとしては最悪の部類だと思うよ、すごくわかりにくい、

「むーりー、ヘタするとすぐ巡査だとか区長の私兵に追い回されてヘタすると監獄行きだよー、死ななきゃマシだけどさー。」

「郎君なら逃げ切れるでしょうに。」
そう言いつつ、もう磨くのも飽きたグラスを置き、カウンター横のイスへ座る。

「で、郎君、何か用事でもあったんでしょ?」

「お、店長いい読みだね、実はこの郎君は用事がある事をダシにしてタダコーヒーをたかりに来ていたのだよ。」
よし、出禁なお前、せめてツケと言えツケと。
精一杯の冷たい視線を郎くんに浴びせつつ、出来うる限りの薄いリアクションで対応する。

「うわー、つめたーい。 お客様にはもっと親切にするべきだ! とまあ冗談は置いといて、少女ちゃん居る? 居るなら呼んでくれたほうが話やすいんだけど。」

少女ちゃん とはうちで同棲というか同居というか。 まあ要するに一緒に住んでいる文字通りの少女だ。
趣味は読書 特技は解読と人食い 好物は私の右腕。
彼女とはしばらく前にこの地区で一悶着合った時に色々あって今に至る。


「居るけど、今奥で寝てるから起こすと機嫌悪いよ? それを考慮した上で呼んだほうがいいなら呼ぶけど。」

「大丈夫なんだなぁ、きっと少女ちゃんも喜ぶ案件ですよ!何せこの万年金欠通り越して赤字経営どころかなんで店やれてるのか不思議なお宅の財政を一気に取り戻せる案件です!素晴らしい!さすが俺!面倒な交渉してきて良かった!」

何か今日テンションがおかしくないか郎くん、徹夜でもしたのか? というかその話しぶり明らかに詐欺師だぞ。うわー、超やる気出ない、というか間違いなく面倒事だ、それも私が死にそうなタイプの。
だが万年金欠の財布事情には変えられない、いい加減少女ちゃんが大量購入したパスタを茹でて適当な調味料でなんとか食える体にする生活はもう厳しい。 食わなくても良いとはいえ、おなかは空くしうまいものは食いたいのだ。

大きくため息をついて席を立ち少女を呼びに行く。郎くんには後ろ向きで手を降って返事をしておけばいいだろう。
廃屋を改築した店の二階へ少女を呼びに行く、部屋の前には【声を掛ける時は死を思え。】とよくわからないセンスの注意書き。それを踏まえた上でノックを二回 声をかける。

「少女ちゃーん、郎君が用事だそうですよー。 依頼なんでできれば起きてくれると嬉しいですが無理しなくてもいいですよー。」


今日は機嫌が良いと嬉しいなぁ……。
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