FC2ブログ
--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2008.09.19

『廃屋』

とりあえずここまで。


















廃屋 第三案 

やあ、俺。 Mrと呼ばれる彼はささやく。
やあ、私。 そう私は返す。
「そろそろ仕事に行かなくてはならないんじゃないのか?時間は俺以外を置いて進むのが随分と得意らしいからね、君は速くしないと糧食を得る術を失ってしまうよ、こんなことは俺が言葉にする必要は無いのか知れないけどね。」と彼ははまたささやく。
「そうだね、そろそろ行かなくてはならないだろうから、Mrは寝てて構わないよ。」私は答える。
「そうさせてもらおうか。」

そして、瞳をこじ開ける。
目が、覚めた。
まだ重い体を引きずりながら、シャワーを浴びに浴室へと向かう、気持ちを切り替えるためには実によい方法だと気が付いて以来、朝の日課になっている。
しばらく、熱すぎるほどの湯を浴び、朝食に向かう。
昨日帰ってきてからカレイライスを作ったのだが、作り終えてしまうと、あまり腹が空いていない事に気が付き、置いておいたままになっている。火を灯す。今日はこれで十分持つ。
そういえば、米が切れていたのだった、仕方が無い角食で代用するとしよう。

朝食を終え、せっかちな追いかけっこを続けている彼等を見る。
む。そろそろ出たほうが良いだろうか、仮に少々遅れても問題は無いが、早く到着する事に問題も無いか。
着替えをすませ、コートを羽織り、出発する。

案の定、空気は肌を刺してくる、顔が痛いくらいだ。
まだ街は目を覚ましてはいないようだ、そもそもこの地区はいつでも、そしていつまでも目を覚ます事は無いのかもしれない。たとえ目を覚ましたとしても、その時は一体何を食らいに這い出て来るのだろうか。
「We are luckey friend。」
そんな歌詞を口ずさみながら歩を進めて行った。

中央地区。ビル群がいまだに各々の機能をはたしている唯一の地区。
そのビル群の隙間を進み、薄暗い袋小路へとたどり着く。三方を高い壁で囲まれ、光は真上からしか届かない。そこに一つ置かれた木製の椅子。
「うん、今日も綺麗だ。」椅子に腰掛ける。

今日で一週間、あと半分か。
実に気楽な仕事だ、こんな仕事ならもっと来ても良い。
真上を向く、四角形に切り取られた空は雲が一つも見えない。
「Mr、聞いているな。3時間ほど経ったら後は好きにして良いよ、今日は特にこれ以上用事は無い。しいて言えば、冷蔵庫の卵が危なかったのと米を買っておいてくれると嬉しいくらいだ、それじゃあオヤスミ。」

目を閉じて、スイッチを切る。
パチン。


む、ヤツは寝たのか、つい数時間前まで寝ていたと言うのに、まだ寝たり無いと言うのか。……。自由に動けるのはありがたいので何も言えんがな。
そして、瞳をこじ開ける。
瞳孔が反応し、痛みを訴える。丁度太陽が真上に来ていたのか。らしくないタイミングだ。それも悪く無いとそのまま目をつぶり、しばらく光の感触を味わう。
さて、まずは視線を向け右腕を確認する、指先から手首、肘、肩、そして胸を通り左腕へ、同じように脚も。全てを十分な時間をかけ、完了させる。
よし、と呟き腰を上げる。考えてみると久々の事か。ハメを外しても、良いか。とも思ったが、ヤツはどうせ何をしても気にしないか。
フンッと花で笑い飛ばし、街へと向かう。

自由になったからと言って、別段にする事も無いが、好き勝手歩けるのは嬉しい事だ。
む、小腹が空いてきた。そういえばもう昼か。とりあえず、今のところは定食屋でも見つけて入る事にするか。

出された唐揚げ定食はワンコインの癖に、随分とボリュームがあった。
ここは、悪く無い。そしてありがとうおやじさん。
そう店主へ向けて手を合わせておく。
いただきます。

ごっそさん。
コイン1枚を勘定として伝票の上に乗せて、店を出る。
また、ぶらぶらとそこらをうろつく。
そういえば、どんな街だろうが寝る場所と酒場と定食屋はあるもんだな、今度ヤツに話してみるか。
気の向くままに歩いていると、ネオン街に流れてきた。昼のネオン街ってのもなかなか、寂しいものだな。昔の人は灯火の海と揶揄したようだが、なるほど、今は大いなる海だと言うのだろうか。言い得て妙である。
特に気に留めるような物も者も無い、時たま空を見上げながらぶらぶらと、進んでいると。ふと、狭い路地で人影が見える。
近づいてみると、少女と思わしき女性がうずくまっている。ここからは、あまり綺麗とは言えない上着を羽織った小さな背中と後頭部が少ししか見えないが、黒色の長い髪を見れば少女だとは判断がつく。
「どうしたんだい、変な薬でもキメて、体にガタでもきたのかい?」
「随分簡単に引っかかってくれたものね。」と少女は振り向きながら言った。
瞳は紅混じり、顔立ちも整っていて悪く無い。一般的には美しいとされる物であろうその顔をみて、つい言葉を吐き出せなかった。
「あら、この顔に見覚えでもあるの?」微笑を湛えながら彼女は言う。
「い、いや。つい綺麗で驚いただけだ。」
「あらありがとう、嬉しいけれど、ちょっぴり悲しいわね。」彼女は言う。
「どうしてだい?」
「まあ、気にしない方が良いわ。私がどう思おうとも、事実は変わらないんですから。」そう言って彼女は―――

「イタダキマス。」




「ゴチソウサマ。」
スポンサーサイト
この記事へのトラックバックURL
http://stifff.blog71.fc2.com/tb.php/16-73f8b1ba
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。