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2014.08.06

5年ぶりに見つけたので

空の遥か高みより投擲されたソレは、破綻した己の本能により加速を続ける。
生物として最低限の危機感すら捨て、ただ一つの現象 一つの弾丸 一つの破壊として存在するためだけに自らを破壊した者は、自己の持つ能力を最大限発揮して破壊力を増す。

形態を変化させ
加速を続け
そして目標へと飛来する

思考する弾頭が至った結論は、全てが破綻しているこの街ですら異常であった。


人としての器を全て変質させてしまった男がいた。
彼は自由に空を飛びたいと願ったわけでもなく、唐突に体が組み変わった。
まるで元よりそうであったかのような完璧に、全てが組み変わった。
国側が勝手に定めた定義によると、自分はもはや人というカテゴリーにすら入ることを許されていないのだ。
生物として理外に置かれた者達があつまるここですら、私の同類は六種しか居なかった。
だが成ってしまったものは仕方がない。

最も異常な者が最も平凡な生活を送るというのは、一体皮肉意外の何だと言うのだろうか。









第一章 夏


「なーあー、店長さんよー、俺もですねー、こうですねー、もっとエネルギー溢れるなんつーかー、その。若者らしい事がしたいんですよ!でもこの街で若者らしい事って何かあるのかって結局素敵なキャンパスライフに性を出すくらいしか無いんですよ!!」

「郎くんなら女の子でもひっかけにいけばいいでしょうに、モテないわけじゃないんでしょ?」

バーのカウンターを改装した我がハウス 我が店 名前はまだ無い アダ名は廃屋バー ひどくないかねちょっとそれ。
そんな店でこのクソ暑い中、コーヒーよりも乳製品の方が比率が高いためコーヒーと表示できない飲料を飲みながら――それもホットで――郎君と呼ばれている若者は駄弁っていたのだ、これ以上無く完璧に駄弁っていたのだ。

「あ!店長今のはひどいよ!俺に彼女とかそういうワードはNGです!Death!死!この前だって可愛いなーって子居たんで声かけたら悪魔さんとこの従業員だったんだぜ? さすがに無理だって、清少納言にアタックする平民くらい無理。」

私といえば、この店――常連客と変な常連客と変な人と変な一見さんしかいない――の隅から隅までヒマに任せて掃除をし、グラスを磨いている。 唯一の客は自分でコーヒーを取り出して飲んでいる始末だ。

「他に若者らしい事って何かあるでしょうに、ちょい悪?みたいな事も今しか出来ないわけだし。」

我ながらオヤジ臭いが、もういい加減まともに取り合うのも面倒になってきたのだ。
あと郎君、清少納言に平民がアタックって難易度のたとえとしては最悪の部類だと思うよ、すごくわかりにくい、

「むーりー、ヘタするとすぐ巡査だとか区長の私兵に追い回されてヘタすると監獄行きだよー、死ななきゃマシだけどさー。」

「郎君なら逃げ切れるでしょうに。」
そう言いつつ、もう磨くのも飽きたグラスを置き、カウンター横のイスへ座る。

「で、郎君、何か用事でもあったんでしょ?」

「お、店長いい読みだね、実はこの郎君は用事がある事をダシにしてタダコーヒーをたかりに来ていたのだよ。」
よし、出禁なお前、せめてツケと言えツケと。
精一杯の冷たい視線を郎くんに浴びせつつ、出来うる限りの薄いリアクションで対応する。

「うわー、つめたーい。 お客様にはもっと親切にするべきだ! とまあ冗談は置いといて、少女ちゃん居る? 居るなら呼んでくれたほうが話やすいんだけど。」

少女ちゃん とはうちで同棲というか同居というか。 まあ要するに一緒に住んでいる文字通りの少女だ。
趣味は読書 特技は解読と人食い 好物は私の右腕。
彼女とはしばらく前にこの地区で一悶着合った時に色々あって今に至る。


「居るけど、今奥で寝てるから起こすと機嫌悪いよ? それを考慮した上で呼んだほうがいいなら呼ぶけど。」

「大丈夫なんだなぁ、きっと少女ちゃんも喜ぶ案件ですよ!何せこの万年金欠通り越して赤字経営どころかなんで店やれてるのか不思議なお宅の財政を一気に取り戻せる案件です!素晴らしい!さすが俺!面倒な交渉してきて良かった!」

何か今日テンションがおかしくないか郎くん、徹夜でもしたのか? というかその話しぶり明らかに詐欺師だぞ。うわー、超やる気出ない、というか間違いなく面倒事だ、それも私が死にそうなタイプの。
だが万年金欠の財布事情には変えられない、いい加減少女ちゃんが大量購入したパスタを茹でて適当な調味料でなんとか食える体にする生活はもう厳しい。 食わなくても良いとはいえ、おなかは空くしうまいものは食いたいのだ。

大きくため息をついて席を立ち少女を呼びに行く。郎くんには後ろ向きで手を降って返事をしておけばいいだろう。
廃屋を改築した店の二階へ少女を呼びに行く、部屋の前には【声を掛ける時は死を思え。】とよくわからないセンスの注意書き。それを踏まえた上でノックを二回 声をかける。

「少女ちゃーん、郎君が用事だそうですよー。 依頼なんでできれば起きてくれると嬉しいですが無理しなくてもいいですよー。」


今日は機嫌が良いと嬉しいなぁ……。
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2008.12.22

1日くらいで消します

結局、最後の最後まで、踊っていたのだけども。それも悪く無いんだ。

少女は笑う
そんな事は悩んでも仕方が無いんだよ、あるがままに受け止めるしか無いんだ。私を含めた全ての異能者なんて、人間ってのがこの世界で最も強いならば結局は駆逐されるしか無いんだよ。それが嫌ならば反抗するか、同化するか、その選択なんてのこそ各自の自由意志に任せるしかないんだよ。私達の一族は結局どちらも選ばなかったけども、それでも生きてゆける道なんてのは手段とかプライドとか、前提を考えなきゃいくらでもあるし、まったく無いかもしれない。要するにその時になったら私は考えるよ。


「最近随分と景気がよさそうだね、朗君。」
「まぁな、ってもその分毎日毎日筋肉痛で死にたい気分だ。いっそのこと痛みが取れる薬でもやろうかなーとか思ったりもしたんだが、どうにも薬は体にあわねぇみたいでな。んで部屋にいても怖いお兄さんに追い回される日々なんでここで休んでるって訳さ。」
郎君、と呼ばれた男は全身をカウンターに任せて寝る姿勢をとってくる。見た目はなんとか10台に見えなくも無いが、実際は今年で4回目だかの大学浪人真っ最中の落ち着きの無い二十代である。
いつもはツナギなんかを着こなしてたりするのだが、今日は珍しくジャケットなんぞを羽織っていっぱしの若者を気取っているようだ。
「それで、今日は何の用事だい、まさかここで寝に来ただけなんて言ったらお兄さんなんかより怖い人にたたき出される可能性があるけれども。」
「あー、やっぱりダメだった?そんなに怒んないでよー、こわーだよー。」
「いままでのツケを返してくれるなら考えるけどね、無論修理費も含めて。」
合計金額はおよそ36万。
「そりゃー無理な話だよ店長さん、さっきまで金はあったけども、愛車のチューンに使っちゃって今はココに来るくらい無一文なんすよー。てことで飯なんかくれませんか、実は2日ほど水しか飲んで無くて。」
朗君にしてはテンションが低いと思ったらそんな理由があったのか。こちらとしてはやりやすいんだが、どうにも張り合いが無いのは寂しい。
無言で店の奥の台所兼厨房へ行く。昨日のあまりもので十分か。
「ほらよ、こっちも最近仕事が全然無いんで厳しいけども、これくらいなら食べてけ。」
「おお!貴方は神ですか!」
心にも思ってない事を言う男だ。
朗君は目の前に置いたカレーライス(特盛り)を飲み込むように平らげてゆく。そのさまはまるでどこぞやの大食い亡霊でも見ているようだが、それも付加価値としてのキャラ付けなのか。
そういえば、亡霊がメシを食ったらきちんと排泄するんだろうか、それともプラズマにでも分解するの?案外これはミステリーかもしれぬ。
そんな事を考えていると。ぐふぅ。と蛙のような声を出して郎君が食事を終えたようだ。
「んで元気になったか?ならさっさと本題を話せ。」
「もう少しこの余韻に浸らせてください、空腹とは最高の調味料とはよくいったもんだ、人生でもしかしたら1番うまかったかもしれないぜ今のカレー。」
「答えたらおかわりをあげようかと思っていたが、いらないようだね。」
「ちょ、まってくれ!話す!話すから!」
現金な男だ。
「本当は少女ちゃんが居た方がよかったんだけど、今いないん?いるなら呼んできて欲しいんだけどにゃー。」
「何故猫語。」
「名前はまだ無い。にゃー。」
「答えになってない。まあ、少女ちゃんは居るには居るが・・・・・・。」
「喧嘩でもしたのかにゃー?そうなのかにゃー?それは良いことを聞いたにゃー。」
「違う、書庫に居るからあまり邪魔をしたくないだけだ。」
「あ、あー。なるほど。それは仕方が無い。俺はもう耳を食いちぎられるのはごめんだしにゃー。」
「一体お前はドコの異世界で経験した記憶を今ここで話しているんだ。」
「冗談ですよ店長。」
「まあ、一応仕事の話なんで、降りてきてもらえると嬉しいかにゃーって事なのにゃー。」
「段々厳しくなってきただろ、オマエ・・・・・・。」
いつの事だか忘れたが、象語とかを試していた時期もあったな。

仕事。
 ここでは便利屋業の事だ。
 前向きは喫茶店を経営しているという事にはなっているんだが、生憎の超がつくほどの立地の為か最高赤字期間の記録を日々更新し続けるような日々になってしまっている。
 便利屋と言っても、私は興信所みたいな仕事を予想していたのだが、始まってみれば常に死と隣り合わせみたいな事ばっかだった、だけども報酬は異常と言えるほど良いので生活苦の我々には甘んじて受けるしかなかった。そんな話だ。
「少女ちゃーん、郎君が仕事もってきてくれたよー。おりてきてー。」
二階の書庫に向かって少女を呼ぶ。
「あーん?郎が?仕事?めんどくせぇなぁったく。」
そんな声が聞こえてきてから、階段が抜けるかと思う速度で少女が降りてきた。
「ういーっす少女ちゃん、元気だったかー。愛してるよー。」
「死んでおけ、ったくやっと解析がはかどってきたってのに、面倒だったらありゃしねぇ。」
2日前に持ってきた本か、随分嬉しそうにしてたが、少女が嬉しそうに読む本なんて、のは大抵が一般向けしない物ばかりだ・・・・・・。
「とりあえず、仕事ってなんだい郎君。」
「えーと、実は俺が一人で請け負ったんだけども、案外強くてさ、お手伝い頼みたいなーって話なんだけどにゃ。」
「店長。」
「なんだい少女ちゃん。」
「寝てくる。」
「あいよ、おやすみ。」
「まーーーった!まて!確かに俺が悪いんだけど手伝ってくれてもいいんじゃないかな!うん!」
「お前が勝手に手ぇ出した仕事になんで手貸さなくちゃいけねぇんだよ。」
「同意です。」
「二人とも今日はひどくないかな!いや、もちろん報酬は4:6でわけますよ?」
「んじゃおやすみ。」
「わかったよ!3:7でいいよ!」
「2:8だな。」
「ですね。」
泣きそうになってきた朗君だったが、しぶしぶ承諾する事にしたようだ。
「それで内容は――。」


「やるなら明後日にしてくれないか、明日は用事が入っててね。」
「構わんよ、というか体直すのに丁度それくらいかかるかなーとか思ってたわけでしてね。」
「都合良いなら俺は寝るぞ。」
おやすみ少女ちゃんと言おうとした時には既に背中が見えなくなるところだった。
「それにしてもフルタイム暇人のはずの店長が用事なんて珍しい事もあるんだにゃ。」
フルタイム暇人とは失礼な、一応仕事はしている。
「本当なら無視したいとこだが、区長さんに会議に出ろといわれてね、面倒だが出ないと後が恐い。彼女ならこの店にナパーム打ち込むくらいなら許可出しちゃうような人だしね。」
大量の黒服と一緒にご来店なされていきなり、週末に会議がある、出席しろ。それだけ言って帰った人だからな・・・。
怪訝な顔をこちらに向けてくる郎君。
言いたい事があるなら言えと促す。
「いや、店長との付き合いも今日で最後になるのかと思うと・・・・・・ね。」
「冗談にならないから恐ろしいよ、というか君ほどの楽天家でも彼女は苦手なのか。」
無理は無いかもしれないが、彼女は怪物中の怪物だ、人間の群れの中でよく生活できたなと思うのは、あの獣じみた視線のせいだろうか。世界は敵しかいないような空気を出している。知識をもった獣とは、素直に恐ろしい物にはなれないかもしれないが、恐怖の対象には十分すぎる。
「彼女に馬鹿やれる人間を俺は一人しか知らないにゃ。」
っても俺の後輩なんだけどね、と嬉しそうに話す郎君。
「というか、そもそも何の会議なんだ。JRR会議のアレかい?」
世界異常発達者機構発達者対策会議、通称ファンタジー対策会議、それではさすがにファンシーすぎるので偉大な作者の名前をとってTRR会議と呼ばれている。とかなんとか。
「そういうことじゃないかね、ほとんど実験動物扱いが確定したようなもんだし、何らかの報復はあるんじゃないかね、話によると悪魔と学長も来るらしい。頭の痛い話だよ。」
「あらあら、悪魔はいいとして、あのご老人も来るんかい、最近は大学にも全然顔を見たヤツが居ないってのに一体どこで何をしているのやら。」
「一応教育機関関係全ての管理とかまかされてるらしいしね、余波受けて続けられなくなったら事なんだろう。」
金の亡者とも、違う、教育の亡者。
知識というか、教育があればどんな思考でも統一できるとか考えてるんじゃないかと囁かれてる半狂人でもある。
「それにしてもなんでまた店長が呼ばれたんだろね。」
私にしても不思議でならないよ、そう言って笑って見せたが、心当たりが無いわけでもない。つい先日の仕事で嫌な最期を見たというか、聞いたというか。

「失礼しますよ。」
ドアを2回ノックして入る。
会議室にはまだ私を含め3人しか到着していないようだが、私には全てで何人の参加者が居るのかも聞いていないので、まだ3人という言葉は不適切かもしれない。
中に居たのは、会議室という場にふさわしいとは到底言えない少女、いや幼女と言った方がいいのではないかと思えるほど幼い女性、どこかのお嬢様だといわれれば納得してしまうほどの外見だが、上から下まで全て深紅で染め上げたようなワンピースは、どこか禍々しく、嫌な感じがする。もう一人は悪魔か。はぁ・・・。
「いらっしゃい、貴方も呼ばれたのか。」
そう悪魔が気さくに話しかけてくる。
「どうせ貴方がまた噛んでるんでしょう、白々しい。」
攻撃的な口調で、幼女がいきなり吼えた。
「おやおや、肉幼女。貴様がそんな事を言うほど馬鹿だとは私は思ってはいないのだがね。」
「お気遣い感謝いたしますわ、なんて言うとでも思ったのかしら。」
「フン。どうせ全てを知って私をからかっているだけなのか、新人に私達の関係をかんぐられたくないのかね。」
悪魔も負けじと返すが、あまり悪意があるとは思えない。なかなかの舌戦である。
「まぁ、お二人。やるならば後でいくらでもやってかまいませんので、私の前で諍いを起こすのはやめていただけませんでしょうか。どうにも最近感情の抑制がうまくいかないのです。」
おや、それは危ない。そう悪魔が笑いながら言うのを見て。幼女も何か思うところがあったのだろうか、私を静かに睨んでから、そっぽをむいて黙ってしまった。
「ところで悪魔さん、一体なんで私はこんな所に呼ばれたんでしょうね。」
「さあ、それは区長に聞くしかないんじゃないかね。」
「貴方の呼ばれた理由も聞いているんですよ。」
「私?私が呼ばれた理由?そんなもの決まってるじゃないか、私は悪魔であり、細菌であり、賢者であり、愚者と呼ばれる男だ。そんな男が何の理由でここに来るのだろうね、店長さん。」
「要するに貴方もわからないんですね。」
「なかなか鋭いな店長、完璧に間違えてることを除けば、パーフェクトだというのに。実に惜しい。」
私は良い道化だなこれじゃ、そう思い。首を傾げてから適当な椅子に腰掛ける。

しばらくして、区長を先頭に数人が入ってきた。どれも私が見た事の無い顔だ。
その内の一人が私を見て苦い顔をしてきた。もう見なくなって久しい制服は、警察と呼ばれてした集団の物だった。
それぞれが無言のまま円卓に着くと、区長が口を開いた。
「さて、二人ほど遅れているが、そんな事を気にしていては私の身が持たない。各々知っている顔もあると思うが、一応説明しておく、私の右から、肉幼女、巡査、悪魔、地下管理局局長代理、不死者。遅れているのが学長と鬼だが、鬼のほうはどうせこの天気では来ないだろう。」
私達を見回して、さも忌々しそうに言う。
それにしても、不死者ねぇ、久々に言われたが。どうにも格好が付かないので好きじゃない。
「それでは本題だ――。」


「で、何だって、会議の内容は。」
「企業が介入してくるんで、自衛しろって話ですよ。」
会議の終了と同時にやってきたこの老人は、もうおわっちゃってたの。などとふざけた事を悲しそうな顔で言ってきた。そして私を見るといきなり明るくなり、あそこの元教え子に聞くよ。と現在に至るわけで。
「自衛ねぇ、自衛。殺し尽くせとは言えない区長らしい言い方だ。まぁ、私の家で好き勝手出来るのは悪魔とか鬼とかそこら辺しか居ないのだがね。」
楽しそうに笑う老人の顔の半分は黒々とした刺青で埋まっている。もう八十は越えてるだろうに、相変わらず死にそうに無いジジイだ。
「それにしても学長、最近見ないって郎君言ってましたけど、何かしてたんですか。」
適当な話題を振っておく事にする、私の大学時代の話など思い出されてはたまったもんじゃない。
「いやぁね、うちの学生にちょっかいかけた連中が居たんで、教育してきてあげたんだけど、さすがに100人超えると一人じゃ辛いねえ。もう私も引退かなぁ。」
「何をしたかは聞かない事にしますよ。」
どうせ洗脳でもしたんだろう。




 男は四本の腕を全て使い、私を叩く。一撃でも十分に重い。
骨はすぐに粉々になってしまう、筋肉は引きちぎれる。皮膚は裂ける。そして血が噴き出す。
背後の壁まで追いやられる。連撃は止もうとしない。視界は既に無いはずなのに、脳裏には私がひき肉になってゆく様子が綺麗に写っている。
これは、彼の見ている映像か。
彼は歓喜している。自分の力を誇示できるのが嬉しい。それだけしか無い。実に単純だ。だからこそ強い。
しかし、脆――。

最後の一撃で、私の脳漿が飛び散り、顔は陥没してしまった。確かに、死んでいると思われるには十分な破壊だ。
男は、私がひき肉になったのを確認してから、路上で倒れている少女の方へと歩を進める。
殺しきるのか、その前に楽しむつもりなのか。後者ならば許せるが。前者の可能性があるのは、軽視は出来ない。
「あ、あー。」
喉から声をひねり出す。声帯は修復されたが、まだしゃがれた声なのは、血が喉につまっているからだろう。
血痰を吐き出す。
男が振り向く。
私はもう立っている。
「君の感情程度じゃ、私は死んであげれないんだ。」
言葉は出れども、現実感が伴わない、何か別の物に言わされてるような感覚。
男は何を感じているのだろう、歓喜か、恐怖か、それとも別の物か。
男が吼える。
初めて聞く男の声は、実に綺麗な獣のソレだった。
私は告げる
「さようなら。」
そして続ける。
「君は何人の殺意まで耐えられるかな?」
これも全て。ただの戯言や戯言にしか過ぎない。


堤防が決壊する。
一人の身に入るはずもない憎悪、殺意そして歓喜。
体の全てが内側から飛び散るような感覚だ。
男が私を破壊しようと襲い掛かる。
全ての殺意に方向性を与える。
男が墜落する。
うつぶせのまま動かない彼をやさしく仰向けにする。
そして私はゆっくりと人差し指を彼の瞳に刺してゆく。
それでも男は停止したように固まっている。
そして、先端が眼窩に当たる、構わず押し込む。骨が折れても、肉が裂けても、私に問題は無い。
そして指先が柔らかいものへと触れる。
男の意識はそこで消えたのを感じた。




















2008.09.19

『廃屋』

とりあえずここまで。













続きを読む
2008.06.25

こんなん書いてます。



何故こんな事になってしまったのだろうか、と思考をめぐらせてみるがやはりこんな事は考えても仕方が無い。
なってしまったのだから。
異能と呼ばれ人外と呼ばれ怪物とよばれ、そして人と呼ばれていた者達が集まる場所。正確には政府の政策によって半ば強制的に集められたこの町。
そんな場所で喫茶店を開いている私。
いつの間にか住み着いた少女。
脳内で四六時中何かをしているMr。


まあ、やっぱり考えても仕方が無いものは仕方が無い。



目が覚めた。
昨日は少女に付き合って少し遅くまで遊んでいたので体にはまだ疲れが溜まっているようだ。
時計に目をやる、時刻は午前9時。店を開けるには少しばかり遅い時間だ。
隣では少女がすうすうと可愛らしく寝息を立てている、私の右手に一糸まとわぬ自分の体を絡ませるようにして。
……これでは起きられない。
「朝だよ」
と空いている左手で少女の体を揺すってみる。
「…………まだ眠い」
少し間があってから返事が来る。
しかしまたすぐに寝息を立てようとしてくる。仕方が無いので力技で右手を引き抜く。
少女は不満らしく、今度は抱きついてこようとするが布団をスケープゴートにして抜け出す。
「30分もしたらご飯できると思うからそれまでには起きてね。」
ベッドの下に散らばっている下着を拾いながら言う。
「んーーーー」
と一応の返事は返してくれるがまた寝息を立て始める。
まあ問題は無いだろう。
しかし、目が覚めたとはいえまだ少し眠い。
しょうがない、シャワーでも浴びて頭にかかってる靄を晴らそう。
浴槽でいつも通りの少し高めの温度に設定した温水を浴びる、やっと目が覚めてきた。
今日中にやらなくてはならない事は特に無いと確認し、浴槽を出る。いつも通りの紺色の服に着替え台所へ向かう。
何作ろうかねぇ、冷蔵庫の在庫にはあまり期待できない。そういえば前に買っておいたパスタが残っていた、朝はそれでいいだろ。
幸いな事に以前作っておいたミートソースの残りがあったので麺を茹でてからめ、後はスープを作って朝食の準備は終わった。
所要時間15分弱、シャワーを含めて30分ちょいとなかなかの手際の良さだと自分を褒めたくなるが、少女の方がまだ早く作れるので自重しておこう、世間知らずなお嬢様みたいな見た目に反して料理の腕は私の何倍も良い。
さて、次は寝室だ。
「ごはんできたよー、おきろー」
肩をガンガン揺すりながら少女に言う。
「あー、うー」
曖昧な返事の少女
「食べないなら全部頂くけどいいね」
「だが断る」
「なら早く着替えて来てね、着替えは出しておいたから」
うー、と唸りながらものそのそと起きて着替える少女。
自分はスープとミートスパをよそって準備を完了させる、こんなもんだろ。
やっと着替え終えて眠そうな顔で食卓につく少女、長い髪がぼさぼさなのは後で私になんとかさせるのだろうな。
いただきます……、と呟いてもそもそと食事を始める少女、私も頂くことにしよう。
二人とも無言で食を進める、こんな静かな朝食も久々でどこか新鮮だ。

食事を終えた辺りで少女もやっと目を覚ましたらしく、茹で加減が甘い、とだけ言い残してシャワーを浴びに行った。
次回から気をつけることにしよう。
後片付けを終えて店を開ける準備に掛かる、と言っても入り口を開けるだけなのだが。
店の表の扉を開け、取っ手にかかっていた札を裏返す。
閑古鳥が数千羽単位で鳴いて、1ヶ月に来る人数が両手で数えられるこの店に今日は人が来るのだろうか。
開店時間があいまいで11時に店を開ける時点で客商売としてはどうかと思うのだが、まあ半分趣味みたいなものだ、そこらへんは妥協してもらおう。
さて、汚れ一つ無いカップ類をまた磨く作業に移ろうか。


午後1時
朝食を取るのが遅かったため、昼食も少し遅くする事にした。
おかげでこの時間の使い道が無くなり、簡単に言えば暇になり、読みかけだった本を読んでいると。
「カラン、カラン」
と扉の鈴の音と同じくして一人の男性が入ってきた。
見た目は20代、もしくは10代後半の大学生、短髪に短パンに【無責任】と胸に書かれたTシャツ、そしてサンダル。
髪は茶色がかっている。
あまりこんな寂れた店に来るようなタイプには見えない男だ。
いらっしゃいませ。と決まりきった定形文を告げる。
男はポケットに両手を入れて店の中を観察しているようだ、ひとしきり観察が終わったのかやっとこっちを見て。
「ういっす!なかなか良い店だな。」
と褒めてきた、何を考えてるのかわからないが自分の店を褒められて嬉しくないわけではない。
「ありがとうございます、それで何かご注文はありますか?」
「喫茶店に来て頼む物なんてハニートーストかコーヒー、もしくはその両方と決まってるじゃないか、てことでコーヒーね!砂糖とミルクありありで!」
「わかりました、席はご自由にどうぞ、他に人なんてそうそう来ませんから。」
「随分と自虐的な店長だな、気に入った!」
随分と楽しそうに言う男、どちらかと言えば私より店を気に入ってほしい、男に気に入られても良いのだが、生憎私は年上専門だ。
「まあ、本当の事なので仕方が無いですよ」
と苦笑する。
男はカウンターの私の目の前に陣取るとしばし私がコーヒーを入れる様子を観察しているようだ。
沈黙が数秒ほど続く。
男は静かに私の行動を見ている、視線を感じるがそれほど嫌ではない。
「それにしても、どうしてこんな店に来たんですか」
コーヒーに砂糖とミルクを限界まで入れて差し出す。
男は差し出されたカップを持ち上げて。
「まあ、ちょっとした用事みたいなもんだよ、とりあえずコレ飲んじゃったら話すかな。」
と、コーヒーを一気に飲み干した。
まてまてまてまて、90度近い温度の液体をいきなり飲み干すような事をして平気なのかコイツは、それよりもう少し味わって飲んで欲しかったものだ。
ふぅ、と男はカップを受け皿に戻すと数秒沈黙した後に。
「あっっっつぅううううううううううううう!」
と大声で叫ぶ男。
当たり前だ。
「大丈夫でしょうか、というかコーヒーは一気に飲み干すものじゃないと思いますよ」
一応の気遣いと個人的な意見を述べておく。
「あっちーあっちー、まあ個人的なポリシーってやつかな!コーヒーは一気に飲まないと気がすまないんだよ」
あれだけの反応をした割には案外余裕の男である。
さてさて、と何事もなかったかのような振る舞いの男。
「えーと、此処に来た理由だっけか」
そういえばそんな話もしていた。
「まあ、その前に店長さん、アンタの名前を聞いときたいんだけどね」
また前置きか、とりあえず名前を言おうとして。
「あ、まったまった!名乗りは聞いたほうが先に言わないと森の双子に怒られちまう決まりだったな、一応現在名は【朗】、朗君で通ってるよ。まあ本当は別の名前もあるんだけど格好悪くてな、こいつで呼んでくれ。」
「私は【店長】ですよ、特に当たり障りも無い名前ですけどね。」
「そうか、んじゃまぁ本題に入ろうか。」
自分で振った割にはあまり興味が無い様子だ、むしろ自分の名前を名乗りたかっただけなのではないだろうかこの男。
「どうぞどうぞ。」
「簡単に言えばな、アンタを殺しに来たんだよ。なんか俺の正義に反応しちゃってね!悪いけどそういうわけで死んで下さい!」
「はい?」
言った瞬間に椅子に座っていた朗と名乗った男がカウンターに両手を付き、その体勢から起用にも蹴りを左側頭部に叩き込んできた。
完璧に食らってしまいカウンターに横倒しになる、食器がいくつか落ちて割れた、そこへ上から追撃の降下型ドロップキックを放ってくる、目標は頭部だと思われる。
意識が曖昧で体も上手く動かないが、そんなことを気にしていては頭を潰されてしまう、なんとかギリギリで体が反応してくれて横へ転がりとりあえず避けられた、が。狭いカウンターで横倒しのままと立っている彼ではあからさまに分が悪い。
躊躇無く私の顔を目がけ足を向けてくる。
あ、ヤバっ。

次の瞬間に店長の顔に朗君の体重のほぼ全てが掛かっている一撃が命中した。
骨が折れる鋭い音と肉が潰れる鈍い音の両方が響いた。

「ありゃ、案外あっけなく終わっちゃったな。」
と物足りなそうに呟く。
んー、処理どうしようかなー、うめちゃおうかなー、まあ放っておいても大丈夫か。などとブツブツ言いながら店長の頭部を何度も何度も踏みつけている。
「一応不死者とか聞いてたけどただの噂だったのか、残念だにゃー。」
さてと、と死体は放置しておくことにしたらしく、店を後にしようと扉へ向かう彼であったが。
取っ手を開こうとしたときに不意に固まった。
「おかしーなー、完璧に破壊したはずだから店長だかって男じゃにゃーはずだにゃー。」
後ろを向いたまま、後ろに居るであろう気配を出している者に聞こえるように言う。
「じゃあ一体だれなのかにゃー。」
振り向き様に短パンのポケットに入れておいた小型のナイフを気配があった方向へ投擲する。
「何してんだお前。」
ナイフが向かっていた標的はそう呟きながら事もなさげに空中でナイフを掴み取る。
「あーあー、店長グチャグチャじゃない、掃除するのは私じゃないから別に構わないけど。」
「えっと………あれ?」
「何困惑した顔してんのよそこのシリアルキラー。」
目の前にいるのが男物のTシャツ着て下は穿いてるのかもわからない長髪の少女でなければここまで困らないだろう。
「おかしいなぁ、悪魔の話だと店長一人だとか聞いてたんだけどなぁ…。」
「勝手に自分で解決しようとしてんじゃねぇよ。」
向き合ったまま片方は腕組みをして固まり、もう片方も困った顔で固まっている。
「んー、とりあえずあれだ。」
口を開いたのは少女。
「一応私の獲物を勝手に襲ってくれたんで、そこら辺はきっちりと清算してもらわないと気に食わないかな。」
唇の両端がだんだんと上に上がって行き、微笑みの形に顔が固定されたところで。
「何か文句でもあります?」
と目はまったく笑っていない少女が言った。



2007.03.28

廃屋

未完成。未完結。未遂。続きを読む
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